診療案内 治療・手術のご案内

患者さまの症例、症状に
最適な治療・手術を行います

大腸と肛門は切り離せない器官です。いずれか一方が病気になった場合、かならずもう一方の検査を行う必要があるほど、密接に関係しています。大腸肛門科では両方を同時に診察できるため、病気を見落とす可能性が低くなります。
一方、肛門の手術は毎日の排便に影響するため大変難しく、患者さまの症状、状態に応じた手術法が必要となります。安易な手術を避けるためにも、流行に惑わされず、伝統的な手術法から最新の方法までを加味した上で、手術法を選択することが大切です。

大腸・肛門科で扱う主な痔の病気と治療

痔ろう

「肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)」の状態が慢性化すると、肛門内から外へと膿が通るトンネル(瘻管:ろうかん)ができ、この状態を「痔ろう」といいます。多くは直腸肛門周囲膿瘍から発症するので強い痛みをともないますが、痛みがなくしこりや膿によってわかる場合もあります。

①…低位筋間痔ろう(ⅡL型) 
②…高位筋間痔ろう(ⅡH型)
③…坐骨直腸窩痔ろう(Ⅲ型) 
④…肛門挙筋上痔ろう(Ⅳ型)

痔ろう

診 断

瘻管(ろうかん)の場所によって図のように分類され、それぞれのタイプで治療方針、術式、治療成績が異なります。適切な方針を決めるために十分な術前診断が重要です。しかし、痔ろうの正確な診断は難しく、触診でわかりにくい場合は、手術時に麻酔をかけてから正確な診断や治療方針(術式)を決めることもあります。

治療法・手術

原則的に診断がついた時点で手術適応となります。代表的な手術方法としては、開放筋固定術(肛門括約筋を一部切開して、瘻管の天井部分を開放した後、切開した括約筋を縫合固定する)、くり抜き法(瘻管をくり抜いて取り除く)、シートン法(瘻管に輪ゴムを通して開放されるのを待つ)などがあります。
痔瘻のタイプや重症度に応じて適切な術式を選択しますが、最も重要な点は、肛門機能に大きくかかわる肛門括約筋へのダメージを必要最小限にすることです。当院では根治性と術後の肛門機能とを両立させるために括約筋をできるだけ温存する手術を心がけています。

痔核(いぼ痔)

痔核は、肛門疾患の中で最も頻度の高い疾患です。発生部位により外痔核と内痔核に分けられますが、両者が連続した内外痔核(混合痔核)もあります。主な症状として出血・腫れ・脱出・痛みがあり、脱出の程度によって4段階に分類されています。

  • 1度…排便時の違和感や出血はあるが脱出はない。
  • 2度…排便時に脱出するが自然に戻る。
  • 3度…排便時に脱出し、指などで押し込まないと戻らない。
  • 4度…痔核が大きく、押し込んでも戻すことができない。

また、腫れ・脱出が急激にひどくなり、痔核が戻らなくなった状態を嵌頓痔核(かんとんぢかく)といい、強い痛みをともないます。

痔核(いぼ痔)

治療法

まず保存的治療が主体となります。軟膏・坐薬により腫れ・痛みの改善をはかります。また、肛門に負担がかからないような排便習慣を改善して、必要に応じて緩下剤を内服します。これらの治療を行っても症状の改善が十分得られない場合、小さな内痔核に対しては、輪ゴム結紮(けっさつ)、ジオン硬化(注射)療法、レーザー焼灼療法などを行います。

手 術

外痔核のあるものや大きい痔核は手術適用となり、痔核根治手術を行います。当院では代表的な方法として結紮(けっさつ)切除術を行っています。肛門の皮膚を必要十分な範囲で切開し、痔核を切除していき、根元で血管を処理した後に切り取ります。通常この方法で、肛門の全周にわたって目立つ痔核を1〜数箇所切除します。根治手術にかかる時間は個人差がありますが、約30分〜1時間です。

裂肛(きれ痔)

裂肛とは、主にかたい便により肛門上皮が裂け、排便時に痛みと出血をともなう疾患です。傷ついた部分が浅いと自然治癒する場合がほとんどですが、再発を繰り返すと傷の周囲に肛門ポリープや見張りいぼと呼ばれる突起ができます。さらに進行すると肛門括約筋が硬くなり、肛門がせまくなる場合があります。

裂肛(きれ痔)

治療法

原因となる便秘の治療が何よりも重要です。毎日排便があるだけでは不十分で、便をやわらかくする必要があります。(排便回数が増えるのは差し支えありません)。ほとんどの方はこうして排便をコントロールし、坐薬や軟膏を使うことで改善します。

手 術

薬で症状が改善しない場合、再発を繰り返す場合、慢性化して肛門狭窄を生じている場合は手術適応となります。狭窄の程度に応じて、内括約筋(側方)切開術や皮膚弁移動術を行います。肛門ポリープや見張りいぼなどは必要に応じて切除します。

肛門(直腸)周囲膿瘍

肛門(直腸)周囲膿瘍は、肛門や直腸周囲に膿がたまる(膿瘍)疾患であり、一般的に急に発症し、強い痛みや腫れ、発熱をともないます。原因として次のようなことが考えられます。

  • 1…肛門周囲の皮膚組織などに原因があるもの(膿皮症といわれるものが多い)
  • 2…肛門内から感染して起こるもの(痔ろうの急性期症状)
  • 3…腹腔内や骨盤内臓器の炎症が波及して起こるもの(きわめてまれな症状)

治療法

原因によって経過や治療方法は異なりますが、いずれの場合もできるだけ早く膿を抜く必要があります。処置が遅れると膿瘍が周囲に広がって難治性となるので、診断がつき次第、早く切開して排膿しなければなりません。

手 術

膿瘍が浅い場合は、局所麻酔の注射だけで容易に処置できますが、深い部分にある場合は、麻酔が十分に効かず痛みが強いため、有効な排膿処置ができません。このため腰椎麻酔下での切開が必要になり、約3日間の入院も必要です。切開後しばらくは膿が出ますので、炎症が治まるまでは外来通院治療が必要になります。
原因が1の場合は上記の処置のみで治ることがありますが、2の場合には、痔ろうに対する根治手術が必要になります。3の場合はそれぞれの原因臓器に応じた治療が必要になります。

切らずに治せる注目の治療法

ジオンによる硬化(注射)療法
〈ALTA療法〉

ジオンによる硬化(注射)療法〈ALTA療法〉

ALTA療法とは、痔核を切る外科手術を行わず、ジオン注射だけで治療する方法のことで、術後の出血や痛みが少なく、入院期間の短縮も期待できます。
ジオンによる硬化(注射)療法は特に内痔核に対して適応となります。ジオンの有効成分は硫酸アルミニウムカリウム水和物とタンニン酸というもので、この液を痔核に注入(四段階注射法)することによって血流を遮断し、痔核に無菌性の炎症を起こし、数週間後に炎症の修復反応である線維化を起こさせて痔核を硬化収縮させます。
患者さまにとって身体的、精神的に負担の少ない治療法ですが、この治療法での再発率は約2割といわれており、従来の痔核切除術に比べて根治性についてはやや劣る部分があります。

硬化療法における合併症
treatmentとその対策

内痔核硬化療法の合併症として、
以下のような症状がでる可能性があります。

肛門部疼痛、
硬結

ジオンの投与場所、投与量によって起こる可能性があります。
排便障害につながることもあるので坐浴、消炎鎮痛剤投与等の対応をします。

発 熱

ジオン投与から2週間後までは起こる可能性があります。
解熱鎮痛薬投与等適切に対処します。

血圧低下、徐脈

ジオン投与中、あるいは投与後に過度の血圧低下、徐脈があらわれることがあるため、本剤投与は手術室にて常時血圧、心拍数を観察できる状態で施行します。

腎機能障害

ジオンの有効成分である硫酸アルミニウムカリウム水和物に由来するアルミニウムは主に腎臓から排泄されるため、腎機能障害のある患者さんへは投与できません。

前立腺炎、睾丸炎、
血精液症

特に男性の前側の痔核に注射する際、ジオンを前立腺、精嚢へ注射した場合に起こる可能性があります。発症した場合は導尿、抗生物質投与など適切に対処します。

直腸潰瘍、狭窄

ジオンの投与場所、投与量によって起こる可能性があります。症状により消炎鎮痛剤、抗生物質投与や切開、ブジー等の処置を適切に行います。きわめてまれですが、一時的に人工肛門手術を要したという報告があります。

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