最初に一般的に便漏れを来す原因を説明します。
まず明らかないぼ痔の脱肛のほかに、内蔵下垂の部分的な症状として会陰下垂があります。
肛門が開くタイプの脱肛や直腸脱で、それほど目立たない段階でも症状は出ます。すなわち、いぼ痔や直腸粘膜が下着を汚すのです。
次に、直腸内にいつも便が残っていることも便漏れの原因になります。これは便秘の一種と考えられます。直腸の神経が鈍くなっていて便が残っていることに気づかない場合がほとんとです。
このほか出産時の会陰切開などで肛門の前の方の筋肉が大きく損傷した場合や、不適切な肛門手術で筋肉が欠損した場合なども、いつも肛門は緩くなってしまっています。これも簡単に便漏れを起こします。
質問の方は年齢的にも会陰下垂や、肛門括約筋の締まりが悪い可能性があります。俗に宿便といわれるものが腸内に残っていますと、便漏れの遠因になります。
まずは、一種の便秘と考えて便通の改善を図ることを最初に試みましょう。これには便秘治療に慣れた、肛門科などの専門病院を受診することが一番の早道です。経過を見ていくうちに便漏れの本当の原因も明らかになると思います。
野垣病院院長 野垣 正宏
2011年5月17日 中日新聞 掲載