自己判断をせず早期受診をすることが大切〜医療法人野垣会野垣病院・院長 野垣正宏氏に聞く〜

痔の種類と一般的な症状

痔についてあまりよく知らない、という人は意外に多いもの。正しい知識を持ち、いち早く治療をすることが大切です。

痔には一般的に三つに分けると①痔核=いぼ痔(内痔核、外痔核)、②裂肛=きれ痔(繰り返すと肛門狭窄に)、③穴痔=痔ろう、となります。このうち痔核や裂肛は主として便秘が原因。痔核は固い便を出そうとして必要以上に力み、その結果血管が風船のようにふくらんでうっ血し、肛門部が圧迫されて外に飛び出す脱肛という症状を起こします。痔核はだいたい約95%以上の人が持っているもので一般的に手術の必要性はなく、初期の段階であれば便秘の治療でほとんど治ります。外痔核は肛門の外にできた一時的な痔で、これも一般的に手術の必要性はありません。また裂肛とは力むことによって肛門の皮膚が引き伸ばされて裂けること。これを繰り返すと繊維性硬化(つっぱり)が起きて肛門が狭くなり症状が悪化、手術の対象になります。いずれの場合もまずは便秘を治すことが大切です。

一方、痔ろうは急性の場合、いわゆるはれ痔といって非常に強い痛みを伴い、これを肛門周囲膿瘍といいます。まずは膿を出す応急処置が必要となります。痔ろうの場合、完治には手術が必要となります。痛み、違和感に関わらず症状があればすぐに受診しましょう。

自己判断は危険すぐに受診を

排便時に肛門の周囲が痛む、出血があるなどの気になる症状があったらまず受診を。「仕事が忙しいから」と我慢すると症状は進行し、場合によっては仕事の都合など考えられないほど重大な病気が見つかることもあります。

また出血をすると「痔だ」と決めつけて自己判断で処置をする人もいますがこれは大変危険。出血は腸の病気に関係する場合もあるので、専門医に診てもらうことが大切です。

女性の場合は患部がお尻だけに受診することに抵抗がある人も多いようです。肛門は大腸にもつながった下部消化器官の一部。大腸、肛門の両方をできれば同時に診察しないとガンなどを見落とすことが非常に多くなります。消化器全体をチェックするつもりで、気になる症状があったらすぐに受診しましょう。

健康的な生活で痔を予防

痔を予防するにはまず便秘にならないこと。一日30分程度のウォーキングをするなど、軽い運動を毎日行うことが大切です。特にデスクワークが多い人は積極的に体を動かすことを心がけましょう。口の中が乾かないように水分をこまめに取ることも大切です。また体が冷えると腸の働きが弱まるので、エアコンなどの空調にも気をつけましょう。肛門は一般的に清潔にすることが常識ですが、もともとは排便のための器官なので過度の清潔は百害あって一利なし。洗いすぎに注意しましょう。

食生活では、暴飲暴食をせず水分を取ることが一番です。繊維の多い野菜や果物、海草などを多めに摂り、アルコール類を飲み過ぎないようにすることはすべての成人病予防につながります。また現代は運動不足により、腸の働きが悪く便秘になるケースが非常に増えています。昔とは違い、今の便秘は排便間隔だけでは決められません。普段から便秘がひどい人は副作用のない適切な薬で治療をしていくことが基本です。

2007年3月29日 中日新聞 夕刊 掲載

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